目次
序文
1.ブルゴーニュの自然環境
2.ブルグント王国からカペ家親王領へ
3.ヴァロワ・ブルゴーニュ公の誕生
4.ヴァロワ・ブルゴーニュ公の北方政策
5.ヴァロワ家初期の国王財政
6.本書の主題
第1部 財源
第1章ブルゴーニュ公領の地代と税
1.収入管理の概況
2.バイイ管区――収入構成とその変化
(1)シャロレ――分析モデルの提示/(2)ディジョン――行政都市の圧力/
(3)シャティヨン・ラ・モンターニュ――軍事の引力/(4)オータン――財務機構の祖型/
(5)オーソワ――変動モデル/(6)シャロン・スュル・ソーヌ――活力の温存
3.シャテルニー――収入構成とその変化
4.変動の分析と記述
(1)管区内変動の比較/(2)変動要因の分析/(3)変動の総合的記述
5.小括
第2章 御用金と借入金
1.御用金徴収の概況
2.徴収と統括の実際
3.配分方法の推定
(1)24分法/(2)世帯調査/(3)負担者の心情
4.借入金の分析
(1)ブルゴーニュ公の借入金/(2)勘定役の借入金/(3)還付の事実
5.小括
第3章 領邦収入勘定
1.領邦収入勘定の概要
2.勘定機構の構築
(1)階層性/(2)ネットワーク
3.予算と決算
4.小括
第2部 貨幣
第4章 造幣の実際
1.造幣所所有権の帰趨
2.ディジョン造幣所
(1)「ドニエ」の用法/(2)製造能力と利益
3.原材料の調達
4.小括
第5章 銀市場と規制
1.銀需要と市場動向
2.両替規制
3.両替規制の系譜
4.両替の地位
5.小括
第6章 貨幣政策の転換
1.銀徴発令とその実際
(1)パリの割当と徴収/(2)ブルゴーニュの割当と徴収/(3)銀2分の1マールの価値
2.銀の転用と方針転換
3.転換期の混乱と訴訟
(1)史料/(2)判事,検察,被告/(3)訴訟の争点/(4)事実の検証/(5)資金要請
4.小括
第3部 人と組織
第7章 財務管理機構
1.ディジョン会計院と領邦統治
2.移動する「中央政府」
3.人の動き
4.小括
結論
おわりに
付録
史料(和訳)
1.ジャン・ピュッセルのオータン管区付き勘定役への就任辞令(1421年12月22日付)
2.オータン管区内集落の戸数減少に伴う地代徴収額の調整の件(1428年4月17日付)
3.臨時課税令(1422年6月27日付)
4.御用金徴収簿の前文(1433年8月11日付と10月28日付)
5.ディジョン造幣所に関する覚書(1436年頃)
6.ディジョン造幣所の会計(1419年11月6日から1420年2月1日)
7.1420年夏の銀市場と各地の造幣所の動向を伝える業務書簡(1420年12月10日付)
8.ブルゴーニュ両替規制令(1421年1月10日付と1423年2月27日付)
9.オーソワ管区の銀徴収記録簿の前文(1421年8月18日付)
10.銀徴収の指図書(1421年10月頃)
11.ブルゴーニュ領邦収入勘定役ジャン・フレニョの訴訟記録(1432年4月25日から1433年5月27日)
12.トゥルノワ切り上げに伴う諸契約の清算方法(1421年12月15日付)
史料(原文)
地図(ブルゴーニュ公領とその周辺)/原語対照表/文献目録/索引/欧文要旨/欧文目次
内容説明
従来の研究はブルゴーニュ公の北方政策で獲得した低地地方が主流だったが,本書ではフィリップ・ル・ボンによる1420年頃から四半世紀に至る領地の経営と財政を考察し,宮廷や戦争を支えていた財務基盤を明らかにする。
租税については,地代と間接税収入は1420年代後半をピークに下落していくが,それを補うために御用金や借入金がたびたび課せられた。それらの徴税業務を担った勘定役は世帯調査や実態を把握して住民の不満に対応した。かれらが税の収奪者ではなく,資金融資ネットワークの主体的運営者として機能したことを明らかにする。
通貨政策では,国王貨幣の委託製造で莫大な利益を得るとともに,金銀の含有量を操作するインフレやデフレの政策を通して貨幣は高品位で安定したが,その反面,財政の弾力性は低下した。
首都を持たず連邦制を構成していた統治機構については財務管理の観点から検討される。公領に設置された諮問会と会計院の高い信頼を基に,それらを核として各領邦間の対等で領邦の特性を活かした自立的相互協力ネットワークにより情報と資金が提供されたことを解明する。
本書は会計史料や法史料500点2万枚を体系的に整理・分析し,公家の財政と金融政策の関連を解明して,初めて領邦経営の実態に迫った画期的業績である。