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文化財の併合

フランス革命とナポレオン

文化財の併合
著者 服部 春彦
ジャンル 歴史
出版年月日 2015/06/30
ISBN 9784862852113
判型・ページ数 A5・496ページ
定価 本体8,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はしがき

序 章 研究史の概観と課題の設定
1 はじめに
2 研究史のあらまし
3 フランス革命・ナポレオン研究者の見解とその疑問点
4 本書の主要な課題

第I部 文化財併合の展開過程
第1章 戦争と文化財併合の開始――ベルギー・ライン地方・オランダ(1794-95年)
1 最初の押収絵画の到着とバルビエの演説
2 前史――旧体制末期から第1次ベルギー占領期まで
3 文化財の併合を正当化する言説
4 第2次ベルギー侵入と押収委員の任命
5 ベルギーにおける押収活動
6 ライン左岸地方への収奪の拡大
7 オランダにおける収奪
8 おわりに――自然史・農業関係物品の押収目的

第2章 イタリアにおける文化財の収奪(1796-1803年)
1 ナポレオンのイタリア遠征と美術品・学術品の収奪
2 押収品のパリへの輸送
3 イタリア美術品の収奪をめぐる論争
4 イタリア美術品のパリ入城パレード(共和暦第6年テルミドールの祭典)
5 小括 1796-97年の押収美術品の特徴
6 イタリアにおける再度の収奪(1798-99年)
7 執政政府期における収奪

第3章 ヴィヴァン・ドノンの登場と収奪の新たな波(1806-13年)――ドイツ・オーストリア・スペイン・イタリア
1 ナポレオンの「美術大臣」ドノン
2 ドノンの収奪欲とナポレオンの立場
3 ドノンの押収活動とその「成果」
(ベルリンとポツダム/ブラウンシュヴァイク/カッセル/シュヴェリーン/ウィーン/ドノンの押収活動の問題点)
4 スペインにおける収奪とドノン
5 イタリアにおける最後の任務
6 おわりに

第II部 フランスにおける収奪美術品の利用
第4章 フランス革命とルーヴル美術館の創設
1 旧体制末期におけるパリの「美術館」
2 革命前フランスの「地方」における「美術館」の形成
3 18世紀ヨーロッパにおける美術品公開の進展
4 フランス革命の開始と国家美術館開設への道のり
5 開館時におけるルーヴル美術館の展示品
6 展示品の選定と展示方式
7 大ギャラリーの一時閉鎖と1796-97年の2つの展覧会
8 国内の他の施設からの美術品の収用
9 美術品の修復の問題

第5章 ルーヴル美術館と収奪美術品の利用(1)――総裁政府~執政政府期
1 イタリア絵画の臨時展覧会(1798-1805年)
2 大ギャラリーの再開(1799, 1801年)
3 ドノンの展示戦略
4 イタリアからの押収美術品の修復
5 古代美術品ギャラリーの開設と展示品
6 地方美術館の創設

第6章 ルーヴル美術館と収奪美術品の利用(2)――第一帝政期
1 1805-10年におけるナポレオン美術館の整備
2 1807年のドイツからの戦利品展覧会
3 ドイツからの押収美術品の修復
4 1810-14年の大ギャラリーの常設展示
5 1814年のプリミティヴ絵画の展覧会

終 章 ナポレオン失脚後の美術品の返還
1 1814年における限定された返還
2 1815年における返還の全面化――相手地域別考察
(プロイセン/ライン諸都市・北ドイツ諸国・バイエルン・オーストリア/アーヘン大聖堂円柱の返還問題/ベルギーとオランダ/スペイン/北・中部イタリア諸国/サルデーニャ王国/教皇国家)
3 おわりに――若干の補足的考察

総 括

註/参考文献/索引

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内容説明

18世紀末から19世紀初めのフランス革命・ナポレオン時代,フランスは近隣のネーデルラント,イタリア,ドイツなどから夥しい数の美術品,学術資料など文化財を収奪し,それらを首都パリに集めた。この収奪は軍事的圧力の下に行われ,「自由の国フランス」こそは全世界の貴重な美術品が本来存在すべき場所であるという,革命のイデオロギーによって正当化された。
第I部では,文化財の収奪の過程を跡づけ,その実態を解明するとともに,収奪を正当化する様々な言説を明らかにする。
第II部では,収奪された絵画と彫刻作品が,フランスでどのように活用されたのか,新設のルーヴル美術館における公開展示を中心に考察する。さらにナポレオン失脚後の美術品の旧所有国への返還について,双方の思惑や駆け引きなど,その経緯と影響を検討する。
フランス革命・ナポレオン時代の「フランス中心主義」が,文化的にはどのような現象を引き起こしたのか,その実態を文化財の収奪という歴史的事実を通して本格的に明らかにしたわが国初の画期的な業績である。
ナポレオン帝国の崩壊から200年,革命と戦争の陰で見逃されてきた,もう一つの近代に光を投ずる。

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