目次
第1章 Hilbert空間上のFourier級数
1 Hilbert空間
2 正規直交系
3 Fourier級数
4 正規直交系の完備性
第2章 古典的Fourier級数の収束
1 Dirichlet積分
2 Dini, Jordanの判定条件
3 Fourier級数の概収束:学史的展望
4 一様収束
5 Fejér積分と(C, 1)総和法
第3章 Fourier変換(その1)
1 Fourier積分
2 f ∈ L1(ℝ, ℂ)のFourier変換
3 応用:熱伝導方程式
第4章 Fourier変換(その2)
1 急減少函数のFourier変換
2 f ∈ L2(ℝ, ℂ)のFourier変換
3 応用:たたみ込み型の積分方程式
4 緩増加超函数のFourier変換
5 L2におけるFourier変換再論
6 周期超函数のFourier係数
第5章 総和核とスペクトル合成
1 移動作用素
2 [−π, π]上の総和核
3 [−π, π]上のスペクトル合成
4 ℝ上の総和核
5 ℝ上のスペクトル合成――L1の逆変換公式
第6章 測度のFourier変換
1 Radon測度
2 測度のFourier係数(1)
3 測度のFourier係数(2)
4 Herglotzの定理
5 測度のFourier変換
6 Bochnerの定理
7 測度のたたみ込み
8 Wienerの定理
第7章 ユニタリ作用素のスペクトル表現
1 Lax-Milgramの定理
2 共役作用素と射影作用素
3 ユニタリ作用素
4 恒等作用素の分解
5 ユニタリ作用素のスペクトル表現
6 ユニタリ作用素の一径数群とそのスペクトル表現――Stoneの定理
第8章 定常確率過程の調和解析
1 二次確率過程
2 弱定常確率過程
3 弱定常確率過程の周期性
4 直交測度
5 弱定常過程のスペクトル表現Cramér-Kolmogorovの定理
6 スペクトル測度の密度函数
第9章 概周期函数と弱定常確率過程
1 概周期函数
2 L∞(ℝ, ℂ)における閉部分代数としてのAP(ℝ, ℂ)
3 概周期函数のスペクトル
4 概周期函数のFourier級数
5 概周期弱定常確率過程
第10章 Fredholm作用素
1 直和と射影
2 Fredholm作用素:定義と例
3 パラメトリックス
4 Fredholm作用素の積
5 指数の安定性
第11章 Hopfの分岐定理
1 Ljapunov-Schmidtの降下法
2 抽象的Hopfの定理
3 Hopfの定理:周期解の分岐
4 CrにおけるHopf分岐
5 N. Kaldorの景気循環論
6 Ljapunovの渦心点定理
付論A 指数函数 eiθ
1 複素指数函数
2 虚の指数函数
3 トーラス ℝ/2πℤ
4 ℝからUへの準同型
5 トーラス上の函数
付論B 函数解析からの補足
1 帰納的極限位相
2 局所凸空間の双対
付論C 超函数論からの補足
1 空間D
2 試料函数の実例と近似定理
3 超函数の定義と例
4 超函数の微分
5 超函数の空間D´の位相
参考文献
人名索引・事項索引
内容説明
経済変数には,時間の流れのなかで周期的あるいは概ね周期的な規則性を伴って反復するものがすくなくない。景気変動はその最も重要な典型例で,多くの経済学者がこの現象の解明に脳漿を絞った。著者自身も景気変動理論の研究過程において調和解析の手法を不可欠とするいくつかの場面に遭遇した。
第一に,N.Kaldorの着想に負う非線形景気変動論である。Kaldor理論の核心は所謂Liénard型の微分方程式に要約され,その周期解の存在を確認する過程から景気循環の発生メカニズムを解き明かす緒が見出されるのである。そのための決定的な原理がE.Hoptの分岐定理である。本書ではこの理論への,調和解析に基づく最も自然なアプローチを詳述した。
第二は,確率的衝撃の重ね合わせが周期的挙動を生成する可能性をめぐっての研究である。これはE.Slutskyの非凡な洞察によって提示された問題であるが,数学的根拠が十分に論証されていなかった。N.WienerやS.Bochnerらの手によって一般調和解析が開発され,漸くSlutsky問題の本質に迫る途が整えられたのであった。
これらの問題にひそむ数理の全貌を基礎から描き出すことにより,周期的経済現象の解明のために調和解析の方法が有する有効性を示すことが本書の目的である。