目次
線形位相/凸集合の基本性質/劣線形汎関数とノルム/集合の有界性と凸集合/線形写像とその空間
第2章 分離定理とその周辺
凸集合の分離定理/楔と錐の分離定理/凸集合,楔,錐の閉性
第3章 順序線形空間と線形束
順序線形空間/線形束
第4章 凸集合の端構造
閉凸集合の端構造/錐の端構造と線形束/多面体/線形計画問題
第5章 アフィン写像と期待効用理論
アフィン写像の基本性質/期待効用
第6章 不動点定理
ブラウアの不動点定理/非協力ゲームの基本定理/変分不等式
第7章 微分法
微分可能写像とその基本性質/連続微分可能写像
第8章 可微分最適化問題
制約無しの理論/等式制約下の理論/不等式制約下の理論
第9章 可微分凸関数類
凸関数/準凸関数と擬凸関数
第10章 双対理論と凸計画問題
無限値をもつ凸関数/ファンシェルの双対理論/真凸関数の双対性/凸計画問題とラグランジュ双対性
内容説明
本書の目的は実数をスカラーとする有限次元線型空間における最適化理論の厳密な数学的基礎を提供することである。このような線形空間は,その次元をmとする数ベクトル空間Rmを中心に議論できるが,あえて抽象的な有限次元線形空間を採用した。一般の線形空間を扱う利点は,問題の本質を明確にすることが可能となり,思考の節約を図り問題点を最短距離で理解する道筋を見えやすくする。さらに抽象的な線形空間を積極的に扱う理由は,無限次元線形空間の理論への移行を容易にすることである。
第1章では有限次元線形空間の線形位相の理解を目指す。2章は凸解析の基本的な道具である凸集合の分離定理を解説する。3章は線形空間と親和性の高い半順序としてベクトル順序を議論する。4章では凸集合の端点や端半直線といった特殊な形状と位置を占める図形に注目しこれらの凸結合として閉凸集合が表現されることを紹介する。5章ではアフィン写像の基本性質を研究した後,経済学やゲーム理論で議論される多くの状況でその理論的基礎をなす期待効用理論の数学的構造を検討する。6章ではブラウアの不動点定理の初等的な証明を紹介し,凸集合の不動点性質を議論する。7章は微分法の基礎理論を展開し,8章では微分可能な写像を対象とした古典的な等式制約最適化問題と不等式制約最適化問題を考察する。9章では微分可能な凸関数の基本的性質を明らかにし,最後の10章では凸解析において凸関数を研究する標準的手法を紹介する。
これらの学習を通して読者は経済学の理論研究を支える確かな数学的基礎を身につけるに違いない。