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近世イギリスの自殺論争

自己・生命・モラルをめぐるディスコースと人道協会

近世イギリスの自殺論争
著者 松永 幸子
ジャンル 歴史
教育学
出版年月日 2012/03/22
ISBN 9784862851291
判型・ページ数 菊判・196ページ
定価 本体3,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序章
はじめに
1 本研究の課題と方法
2 本書の構成

第Ⅰ部 自殺論争
第1章 自殺擁護論の系譜
1 17 世紀以前の自殺論――自殺把握のキリスト教的伝統
2 最初の自殺論――ジョン・シム
3 最初の自殺擁護論――ジョン・ダン『ビアタナトス』「自己保存」としての自殺
4 ある文学者の死とその波紋――「私こそが私自身の王」「愛の情念は美しい」
5 ヒュームによる自殺論
6 ヒュームの道徳論・教育論
道徳と理性・自己愛/人為的徳としての「正義」と「教育」/人為的徳の形成にかかわるものとしての「教育」
小括
第2章 自殺批判論の系譜――自殺批判論の動揺と反撃
1 ジョン・アダムスによる反撃――生命の所有・管理権(Propriety)と人生目的論
2 自殺批判軸としての家族論
3 教育(Education)への注目
第3章 医学的自殺論の系譜――自殺の医療化
1 『イギリス病』
2 メランコリーと自殺――17 世紀以前
ティモシー・ブライトのメランコリー論/ロバート・バートン『メランコリーの解剖』
3 自殺の医療化――自殺把握の全面的病因論化

第Ⅱ部 人道協会(Humane Society)の出現とその思想
第1章 イギリス初の自殺防止・人命救助団体の出現とその活動
1 協会の設立と自殺防止
協会の設立と目的/王立嘆願書・設立趣意書――ホーズの計画「自殺者の救助,人口増大への寄与」/「一般救助施設」の要求/学校と市民の教育
2 活動内容
年次報告書(Annual report)/ジャーナリズムの反応
第2章 RHS の思想と教育――コーガンとグレゴリーを中心に
1 コーガンによる情念論・人間論
自己愛(Self-Love)と慈愛(Benevolence)/自己愛と教育
2 グレゴリーによる教育論・モラル論・自殺論
教育について――学校教育と幼児教育/モラルについて/自殺について
3 RHS における牧師たちによる自殺防止論と教育論――「同情」・「家族」・「愛国」
結章――おわりに

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内容説明

イギリスでは伝統的に自殺はself-killerと言われ文字通り自己殺人として扱われてきた。自殺者にはキリスト教式葬儀と埋葬が禁止され,土地や財産は没収,その家族にも累が及んだ。自殺大国でもあったイギリスで17世紀に入りジョン・ダンによる初の自殺擁護論『ビアタナトス』(1647年刊)が刊行され,それを発端にヒュームをはじめ哲学者や牧師,医師たちにより,擁護派と批判派による激しい自殺論争が展開された。
本書は17・18世紀の自殺論争を,擁護論,批判論,医学論の三つの系譜から検討し,〈自殺は犯罪なのか〉という問いを軸に「自己保存」についての理解を自殺論争の重要な鍵概念として,「自己」とは何か,その所有と管理権が帰属するのは神か,国家か,個人かなど多様な議論を考察する。自殺者の検視で「心神喪失」とされるケースが増えるに伴い論争は医学的領域に収斂し,さらに自殺を精神衛生の問題とみなし自殺把握,自殺防止団体の源流となる王立人道協会が設立され,その活動の実態が膨大な史料で詳細に解明される。
自殺観,生命観とモラル観の史的変容を考察し,教育学の視点から生命と教育の関連と意義を明らかにして,現代の自殺問題を考える上でも必読の文献となろう。

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