ホーム > 中国古典社会における仏教の諸相
目次
序
第Ⅰ部 佛敎史書について
一 宗鑑『釋門正統』以前――天台宗史とその成立(一)
はじめに/元穎撰『天台宗元録』(附:傳の獲得)/呉克己撰『釋門正統』(附:宗史の形式)/景遷鏡菴撰『宗源録』(附:山家・山外兩派の對立起源)
二 宗鑑『釋門正統』について――天台宗史とその成立(二)
「釋門正統序」/『釋門正統』のテキストと構成/『釋門正統』と『佛祖統紀』の立場の相違――道因草菴の扱い/結語/(付録)『釋門正統』全八卷目次
三 讀『佛祖統紀』
はじめに/志磐の生涯/志磐の立場/「述」に見る志磐の主張――政治との關わり/結語
四 『佛祖統紀』の作者、志磐の考え
はじめに/『四庫全書存目叢書』所收の『佛祖統紀』テキスト1/『四庫全書存目叢書』所收の『佛祖統紀』テキスト2/結語
五 『佛祖統紀』テキストの變遷
はじめに/祖本と各種大藏經テキストと『大正藏本』・『續藏本』/祖本テキストから勅撰入藏テキストへ/削除と改變の實例/おわりに
六 宋代における佛敎史書
はじめに/宋初の律宗學僧、贊寧の史書/志磐『佛祖統紀』について/佛敎宗派内外の對立と史書/結語
第Ⅱ部 佛敎徒・佛敎信者
一 佛敎徒の遺言
はじめに/薄葬遺言について/遺言に見る佛敎の葬喪儀禮とその拒否/遺産處分に關する遺言/不空の遺言――結び
二 楊億研究―「殤子述」を讀む
はじめに/楊億について/夭折者の墓誌銘――權德輿の場合/「殤子述」について/結び 楊億の佛敎的立場/(付録)楊億(974-1020)簡易年譜
【横組】
第Ⅲ部 中央アジア出土の漢語文獻
1 返還文書研究1――「返還文書」とその一覽
「返還文書」について/Ch/U8206/返還文書一覽表
2 返還文書研究2――「返還文書」から見たトルファン版本の概觀
はじめに/大藏經版本について/契丹大藏經、房山石經とトルファン文書の版本/餘録
3 インド美術館藏トルファン漢語斷片假目録
序/インド美術館藏トルファン漢語斷片假目録假目録
4 出口コレクションの一斷片によせて
はじめに/「論語疏」から「法華玄贊疏」へ/契丹經藏・章疏類の發見と同定/詮明と遼の法相學のひろがり/おわりに――今後のトルファン漢語文書の研究方向にむけて
5 イスタンブール大學圖書館藏漢語トルファン文書一覽表
序/イスタンブール大學圖書館藏漢語トルファン文書一覽表
6 元初の一枚の印刷佛典扉繪と供養圖
出口コレクション「扉繪」/ベルリン「扉繪」の研究經緯/ベルリン「扉繪」の問題點/むすび 結論に向けて
7 『佛母經』の傳承
はじめに/『佛母經』について/ロシア藏敦煌寫本とトルファン寫本の『佛母經』/國立バイエルン圖書館所藏の『佛説小涅槃經』(Cod.sin.59)/中國國家圖書館所藏の『佛説小涅槃經』/結語 『佛母經』の傳承
8 唯識關係新史料
はじめに/詮明『上生經疏科文』と『彌勒上生經疏會古通今新抄』/道氤『御注金剛般若經疏宣演』/むすび
9 もう一つのドイツ中央アジア將來文獻――フランケ・コレクションについて
序/フランケ將來漢語文獻假目録
10 大谷勝眞のベルリン訪問――戰前におけるある日本人學者の功績
第Ⅰ部 佛敎史書について
一 宗鑑『釋門正統』以前――天台宗史とその成立(一)
はじめに/元穎撰『天台宗元録』(附:傳の獲得)/呉克己撰『釋門正統』(附:宗史の形式)/景遷鏡菴撰『宗源録』(附:山家・山外兩派の對立起源)
二 宗鑑『釋門正統』について――天台宗史とその成立(二)
「釋門正統序」/『釋門正統』のテキストと構成/『釋門正統』と『佛祖統紀』の立場の相違――道因草菴の扱い/結語/(付録)『釋門正統』全八卷目次
三 讀『佛祖統紀』
はじめに/志磐の生涯/志磐の立場/「述」に見る志磐の主張――政治との關わり/結語
四 『佛祖統紀』の作者、志磐の考え
はじめに/『四庫全書存目叢書』所收の『佛祖統紀』テキスト1/『四庫全書存目叢書』所收の『佛祖統紀』テキスト2/結語
五 『佛祖統紀』テキストの變遷
はじめに/祖本と各種大藏經テキストと『大正藏本』・『續藏本』/祖本テキストから勅撰入藏テキストへ/削除と改變の實例/おわりに
六 宋代における佛敎史書
はじめに/宋初の律宗學僧、贊寧の史書/志磐『佛祖統紀』について/佛敎宗派内外の對立と史書/結語
第Ⅱ部 佛敎徒・佛敎信者
一 佛敎徒の遺言
はじめに/薄葬遺言について/遺言に見る佛敎の葬喪儀禮とその拒否/遺産處分に關する遺言/不空の遺言――結び
二 楊億研究―「殤子述」を讀む
はじめに/楊億について/夭折者の墓誌銘――權德輿の場合/「殤子述」について/結び 楊億の佛敎的立場/(付録)楊億(974-1020)簡易年譜
【横組】
第Ⅲ部 中央アジア出土の漢語文獻
1 返還文書研究1――「返還文書」とその一覽
「返還文書」について/Ch/U8206/返還文書一覽表
2 返還文書研究2――「返還文書」から見たトルファン版本の概觀
はじめに/大藏經版本について/契丹大藏經、房山石經とトルファン文書の版本/餘録
3 インド美術館藏トルファン漢語斷片假目録
序/インド美術館藏トルファン漢語斷片假目録假目録
4 出口コレクションの一斷片によせて
はじめに/「論語疏」から「法華玄贊疏」へ/契丹經藏・章疏類の發見と同定/詮明と遼の法相學のひろがり/おわりに――今後のトルファン漢語文書の研究方向にむけて
5 イスタンブール大學圖書館藏漢語トルファン文書一覽表
序/イスタンブール大學圖書館藏漢語トルファン文書一覽表
6 元初の一枚の印刷佛典扉繪と供養圖
出口コレクション「扉繪」/ベルリン「扉繪」の研究經緯/ベルリン「扉繪」の問題點/むすび 結論に向けて
7 『佛母經』の傳承
はじめに/『佛母經』について/ロシア藏敦煌寫本とトルファン寫本の『佛母經』/國立バイエルン圖書館所藏の『佛説小涅槃經』(Cod.sin.59)/中國國家圖書館所藏の『佛説小涅槃經』/結語 『佛母經』の傳承
8 唯識關係新史料
はじめに/詮明『上生經疏科文』と『彌勒上生經疏會古通今新抄』/道氤『御注金剛般若經疏宣演』/むすび
9 もう一つのドイツ中央アジア將來文獻――フランケ・コレクションについて
序/フランケ將來漢語文獻假目録
10 大谷勝眞のベルリン訪問――戰前におけるある日本人學者の功績
内容説明
仏教は随唐時代に中国人の宗教として新しい仏教を生み出した。それは当然儒教と道教に多くの影響を与え,また仏教もこれら二教から強い影響を受けた。中国思想の中で仏教はどのように受容され,どのような影響を与え,いかなる相互作用が展開したのか。
国家イデオロギーとして君臨する儒教の下では異国の教えである仏教は破棄すべきものであったため,仏教と儒教の関連資料も少なく充分な考察がなされてこなかった。士大夫が取り組むべきは儒教だけであるが,それは社会の表の姿であった。裏では仏教や道教と常に強く結びついていた。とくに外来の組織である仏教にとっては,漢字を基盤として確立していた儒教文化の下に受容されるには,その基盤の上に立って社会的な地位を固め,教えを広め,定着を図らねば,その存続すらできなかった。
著者は中国思想史の観点から仏教書と仏教徒の作品を通して儒教との関連を解明する。「Ⅰ 仏教史書」では天台宗史の成立を検討して,仏教と世俗権力との関係を考察し,「Ⅱ 仏教徒・仏教信者」では唐宋期の仏教徒の遺言や墓誌銘を手がかりに個人の側から仏教の受容を検討する。「Ⅲ 中央アジア出土の漢語文献」はヨーロッパのトルファン文書研究の状況を伝え,その文化的意義を明らかにする。
国家イデオロギーとして君臨する儒教の下では異国の教えである仏教は破棄すべきものであったため,仏教と儒教の関連資料も少なく充分な考察がなされてこなかった。士大夫が取り組むべきは儒教だけであるが,それは社会の表の姿であった。裏では仏教や道教と常に強く結びついていた。とくに外来の組織である仏教にとっては,漢字を基盤として確立していた儒教文化の下に受容されるには,その基盤の上に立って社会的な地位を固め,教えを広め,定着を図らねば,その存続すらできなかった。
著者は中国思想史の観点から仏教書と仏教徒の作品を通して儒教との関連を解明する。「Ⅰ 仏教史書」では天台宗史の成立を検討して,仏教と世俗権力との関係を考察し,「Ⅱ 仏教徒・仏教信者」では唐宋期の仏教徒の遺言や墓誌銘を手がかりに個人の側から仏教の受容を検討する。「Ⅲ 中央アジア出土の漢語文献」はヨーロッパのトルファン文書研究の状況を伝え,その文化的意義を明らかにする。