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ベルクソンとマルセルにおける直接経験

ベルクソンとマルセルにおける直接経験
著者 塚田 澄代
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2013/03/15
ISBN 9784862851499
判型・ページ数 菊判・288ページ
定価 本体5,200円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序文(パラン=ヴィアル)
まえがき
ベルクソンのマルセルへの手紙

序論
第1部 方法論
第一章 ベルクソンの方法――直観
A ベルクソンの超知性的方法
a) 特権的思考としての直観
b) 方法の第一歩――否定的方法
c) 知的表象が引き起こす疑似問題と時間実在の無理解
B ベルクソンの「反科学的ではない方法」
a) 厳密な科学としての哲学の方法
b) 直観の生命科学による説明
第二章 マルセルの方法――第二の反省
A マルセルによるベルクソンの直観批判
B 第二の反省
C 第一の反省
D 実存的確信
E 結論――マルセルの第二の反省とベルクソンの直観
第2部 テーマ別研究
第一章 持続と広がり〔延長〕(時間と空間)
Ⅰ ベルクソンとマルセルにおける直接的広がり〔延長・空間〕
A ベルクソンにおける直接的広がり〔延長〕
a) 物質の具体的広がり〔延長〕の直接的知覚〔純粋知覚〕
b) 芸術的空間
B マルセルにおける生きられる空間
Ⅱ ベルクソンとマルセルにおける空間化された時間
A ベルクソンにおける空間化された時間と空間
a) 等質的空間
b) 記憶の広がり
B マルセルにおける空間化された時間
Ⅲ ベルクソンとマルセルにおける持続
A ベルクソンの不可分な持続とマルセルの分割されていない持続
B 空間化された持続の批判の帰結
a) 過去の経験――記憶
b) 現在の経験
c) 未来の経験――予見不可能な持続と予感
C 持続――永遠
 第一章の結論
第二章 ベルクソンの共感と愛およびマルセルの相互主観性
Ⅰ ベルクソンにおける共感と愛の観念
A 他者と自己の存在
B 共感と愛のさまざまなレベル
Ⅱ マルセルにおける相互主観性
A 他者と自己の存在
B 相互主観性のさまざまなレベル
Ⅲ ベルクソンとマルセルにおける直接経験
全体の結論

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内容説明

直接経験とは「どのような条件で,哲学するという行為が,言葉ではなく,事象そのものを対象とする実際の行為となりうるかを知ること」(マルセル)である。
ベルクソンは20世紀初めに伝統的経験論,観念論,唯物論が押しつけた鉄鎖を打ち砕き,彼とマルセルによってフランスにおける新しい哲学の方法が生まれた。カントでは認識するものとされるものは直接的ではありえず,ヘーゲルはその距離を克服しようとして媒介を導入したが挫折した。ベルクソンとマルセルによって直接経験の新しい認識が告げられ,それは「実存の根源そのもので媒介不可能な」直接的経験の性格を発見することであった。
マルセルはベルクソンを通して直接経験の重要性に気づき,ベルクソンの哲学精神と直接経験に対する探究精神を称賛した。ベルクソンは「概念が偶像崇拝する思考の全くの不十分さ,むなしさ」を示し,「経験から出発するのではなく,経験の屑から出発する」と批判した。マルセルは「現実の咬み傷」を見分ける具体的な哲学の方法を目指した。
両者にとって哲学するとは,直接経験へと帰ることであり,ベルクソンにあっては持続と感じる経験から神秘的経験へ,マルセルでは感じることから信仰と愛へと向かい,両者は神を見出すことにより,感覚的認識と身体的生を精神的生と神秘的経験に結びつける存在理解に到達する。
第Ⅰ部では方法の問題として,ベルクソンを「持続の直観」,マルセルを「存在の参与」へと導いた厳密な反省について考察し,第Ⅱ部では両哲学者の直接的実在である,感覚世界,人間存在,超越的「存在」を比較検討する。

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