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エンハンスメント

バイオテクノロジーによる人間改造と倫理

エンハンスメント
著者 生命環境倫理ドイツ情報センター
松田 純
小椋 宗一郎
ジャンル 哲学・思想 > 生命倫理
出版年月日 2007/11/15
ISBN 9784862850218
判型・ページ数 4-6・232ページ
定価 本体2,600円+税
在庫 在庫あり
 

目次

Ⅰ はじめに エンハンスメントをめぐる議論の対象と,中心となる問いの方向性
 1 エンハンスメントと医療行為の目標設定
 2 生物医学的な人間改良についての医療経済学的観点からの検討
 3 エンハンスメントはそもそも倫理的正統性をもちうるか
正義と公正/医療化/共犯/本物なのか?/人間の不確かさがもつ道徳的意味

Ⅱ 遺伝子技術によるエンハンスメント  行動分野1
 1 エンハンスメントを遺伝子技術からの全般的な除外規準とする?
 2 医学上のリスク便益比
 3 遺伝子技術によるエンハンスメントと正義
 4 社会的差別と優生学的誤用の危険
 5 遺伝子技術によるエンハンスメントを同意能力のない第三者に施すという問題
 6 人間の不完全さの価値(Dignit?t)
 7 規準となる人間像についての問い

Ⅲ 小児医療における成長ホルモン剤の利用  行動分野2
 1 低身長は病気か?
 2 医療の目標
 3 治療とエンハンスメントとの区別が,医療行為の他の倫理的規準との関係のなかでもつ規範的な意義
 4 子供の利益と両親の願望
 5 正義と,機会の平等
 6 原則に基づく決定,それとも個別ケースに応じた決定
 7 研究の特殊な問題状況
 8 小児医療を超えた拡大

Ⅳ 向精神薬によるこころの改良  行動分野3
 1 抗うつ剤による自己の改良
 2 人格疎外とうつ状態の価値
 3 精神薬理学による生活世界の医療化
 4 自己実現手段としての向精神薬
 5 向精神薬によって本物の人格は損なわれるのか,それとも可能になるのか?

Ⅴ 形成外科と美容外科  行動分野4
 1 美容外科治療の動機とその効果
 2 当人の自律と社会的標準についての問い
 3 共犯という非難
 4 芸術作品としての身体?
 5 美容外科の医療経済学的側面と社会法的側面
 6 美容外科が医療内部に占める位置と,その商業的側面

Ⅵ スポーツにおけるドーピング  行動分野5
 1 「ドーピング」とは何か?
 2 ドーピングはスポーツの歴史のなかで良く知られた問題
 3 医療とスポーツのなかで無条件に禁じられた五つの薬物の利用とその副作用
興奮薬/麻薬/蛋白同化薬(Anabolika)〔アナボリック・ステロイド――筋肉増強剤〕/利尿薬/ペプチドホルモンおよびそれと類似の作用をもつ薬物
 4 スポーツ界のドーピングにおけるエンハンスメント問題という視点
  機会の平等としての公正/医師の責任と個人の自己決定/スポーツ能力が本物であることと,スポーツの医療化

〔付録〕
病気と病人(ディルク・ランツェラート)
 1 序
 2 病気概念の歴史的展開
 3 自然状態としてのもろもろの病気
  記述と評価のはざまにある「病気」/機能不全としての病気/病気の分類
 4 病める主体
  病気と自己解釈/病気と身体経験/病気と生活世界/病気と社会
 5 病気概念の倫理的機能について

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内容説明

エンハンスメントの概念は1980年代に人間に対する遺伝子技術の介入の限界をめぐる議論の中で,治療の反対概念として生み出された。それは,健康の回復と維持を超えて,能力や性質の改良をめざして人間の心身の仕組みに生物医学的に介入することを指す言葉である。
例えば肉体的な耐久力や魅力といった身体的性質の強化,記憶力のような認知能力の向上,さらに攻撃性など行動特性の陶冶矯正ほか目的は多様であり,方法として薬物使用,外科,遺伝子技術が用いられる。
病気に対する治療やケアを超え,人間の自然本性を改良する行為をどこまで認めるか。これは「病気とは何か」をはじめ,倫理的,社会経済的な問題など多様な議論を生み,全貌を掴むことは困難である。
本書は世界の最先端の議論も含め,現状を総合的に紹介した初の本格的業績となった。

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