ごあいさつ
知泉書館社長 小山光夫
| 株式会社知泉書館は、2001年6月に設立されました。出版界を取り巻く環境はことのほか厳しく、あえて逆風をうけての船出です。いままでの経験を生かし、新しい環境のなかで意義ある仕事ができるようベストを尽くす所存です。 かえりみれば、近代以降のわが国の学問は諸外国とりわけ西欧の影響のもとに形成され発展してきました。しかしこんにち、近代西欧をひとつのモデルとして邁進してきた学問的営為は、大きな節目を迎えています。さらに、現代の学問は世界的にも多くの未解決な難問に遭遇し、もはや外部に解決策やモデルを求める姿勢だけでは、真に創造的で有効な成果を生みだしえない状況になっています。 くわえて、創造的な知を培う研究・教育機関としての大学も、制度疲労と急激な環境変化にみまわれ機能障害に陥っています。 他方で、世界的な規模での情報の多様化とその基盤整備は・時間と空間をますます狭め、まるで世界がひとつになってゆくかのような、バラ色の未来像を描いています。しかし同時に、とくに科学技術の巨大かつ急速な革新が、自然環境に計り知れない影響と負担を強いていることもたしかです。そうしたなかで、社会の動きと人々の生のリズムとのあいだには強い緊張がもたらされ、新たな人間疎外ともいうべき社会病理現象を生みだしています。 このような時代認識をふまえ、また二度の世界大戦という負の経験をへた時代にあって、私たちは、人びとが真に豊かな生活を享受し、同時に世界の平和や福祉に貢献するためには、学術文化のいっそうの発展と交流こそが有効な道であると信じます。私たちの出版活動が、世界に開かれた教養形成のために、微力ながら役立ちうることを切に願っています。 前途多難な航海になることと思いますが、末永く皆さまのご支援とご協力を心からお願い申し上げるしだいです。 |
